会社で新しいサービスの立ち上げを進めることになったけど、何から始めたらいいのかわからないなぁ…
事業の立ち上げや見直しの際は、自分の会社の状況、取り巻く環境について把握することから始めましょう。
いわゆる外部環境の分析というものです。
外部環境の分析?分析と言われると難しそうな気がするなぁ…
それに、スタートするサービス自体の作りこみをしないでいいんですか?
一つずつ解決しましょう。
たしかに分析と聞くとむずかしそうだと思う方もいますよね。
ですが、安心してください。
ビジネスフレームワーク「PEST分析」を利用することで不慣れな方も分析を行うことができます。
また、利用者や社会が何を求めているのかを把握すれば、より良いものが提供できるようになります。
言われてみるとそうですね。
私もみんなが求めているものを届けられたらウレシイ!
でも、やり方がわからない…
やり方がわからないならラッキーです!
この記事で、やり方とポイントを説明することができそうです!
記事の中で、PEST分析の目的や構成、やり方とポイントを中心に解説します。
PEST分析を理解し、ビジネスチャンスを獲得できるようになりましょう!
【目次】 クリックで該当箇所へ移動!
PEST分析(ペストブンセキ)とは
PEST分析とは、経営学者のフィリップ・コトラーが考案したマーケティングにおけるビジネスフレームワークです。
「調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場参入をしようとするようなもの」
フィリップ・コトラー著『コトラーの戦略的マーケティング』より
PEST分析は、外部環境を分析するツールです。
自社でコントロール不可能な「政治、経済、社会、技術」といった社会全体を指す「マクロ環境」による影響を整理し、経営をはじめとした戦略を検討する際に活用します。
また、PESTに、【E】:Environmental factors(環境的要因)、【L】:Legal factors(法律的要因)を加え「PESTEL分析」と言われることもあります。
しかし「環境的要因」はPESTの「S:社会的要因」に、「法律的要因」は「P:政治的要因」に含むことが一般的なことから、本記事ではPESTを中心とした解説をします。
- フレームワーク:戦略をよりスムーズに進めるための分析ツール。情報収集や整理だけではなく、柔軟に思考することで、有益な結果を導き出すために活用される。
- マクロ環境:政治、経済、社会、技術といった社会全体、大きな世の中の流れのこと。自社のみでのコントロールは不可能である。
- ミクロ環境:需要状況、顧客動向、競合動向、製品関連技術、供給業者動向といった業界内の環境のこと。自社の働きかけで環境に影響を与えることも可能とされる。
PEST分析の目的
PEST分析の目的は、マクロ環境を分析し、マーケティング戦略に活かしていくことです。
マクロ環境は自社でコントロールができない世の中の流れです。
事業に与える影響が大きかった場合は、大企業であっても大きなダメージとなり場合によっては経営破綻すらありえます。
そのため、環境の変化に注意し、トレンドを確実に捉えることが重要となります。
PEST分析は一度実施して終わりではなく、都度実施することが理想的です。
- 事業に影響を与える要因を見落とさない
- 外部環境の変化を敏感に察知する
- マクロ環境を把握し仮説を立てて将来に備える
- 新たな環境に合わせた立ち位置を確保し競合より優位に立つ
PEST分析は、直接売り上げや利益に貢献する業務ではないので、マネジャーでも使いこなせなかったり、おろそかにされたりしています。
その結果、単なる情報収集で終わっていることも多いです。
マーケティングでは、常に意思決定を迫られます。
より良い判断のために、PEST分析は用いられるべきでしょう。
PEST分析の 4つの項目
PEST分析では、4つの環境要因から分析をおこないます。
英単語にし、頭文字をとり「PEST」と名付けられました。
【P】:Politics(政治的環境要因)
【P】:Politics(政治的環境要因)は、政治や法律などの変化に関して分析をします。
Politics(政治的環境要因)の内容は以下になります。
- 法改正
- 判例
- 規制緩和
- 税制の変化
- 政治動向
- 政治思想の潮流、変化
- 補助金制度、交付金制度、特区制度の変化
ポイント
消費税の引き上げは、経済の動向に大きな影響を与えました。
冷蔵庫などの大型家電や不動産物件など価格が高いものは購入額に大きな差がでるため、駆け込み需要が増えました。
【E】:Economic(経済的環境要因)
【E】:Economic(経済的環境要因)は、経済成長や景気などの変化に関して分析をします。
Economic(経済的環境要因)の内容は以下になります。
- 景気動向の変化
- 賃金動向の変化
- 物価
- 消費動向の変化
- 為替の変化
- 金利の変化
- 株価の変化
ポイント
需要と供給のバランスは、価格に影響を与えます。
為替が円安になると、輸入にたよっている食料品店や外食産業は仕入れ価格が高騰します。
景気動向、為替の変動に対してリスクヘッジを行うことが重要となります。
【S】:Social(社会的環境要因)
【S】:Social(社会的環境要因)は、人口やライフスタイルなどの変化に関して分析をします。
Social(社会的環境要因)の内容は以下になります。
- 人口、人口構成、密度
- 社会インフラ
- 流行、世論、事件
- 高齢化、少子化
- 言語、教育、宗教
ポイント
少子化により、学校や教育事業の顧客数は減少しています。
母数は減っていますが、教育に関心の高い層を取り込み、顧客単価を上げるチャンスに変えることもできます。
【T】:Technological(技術的環境要因)
【T】:Technological(技術的環境要因)は、新技術や特許などの変化に対して分析をします。
Technological(技術的環境要因)の内容は以下になります。
- インフラ
- ビッグデータ
- IT、IoT技術
- 新技術
- 開発
- 特許
- イノベーション
ポイント
ブルーレイ以上の技術は、しばらく登場しないと思われていた光ディスクも、次世代光ディスクの「Ultra HD (ウルトラ ハード) ブルーレイ」が開発されました。
再生が対応可能な機器などの販売ではチャンスとなります。
PEST分析のやり方とポイント
PEST分析をしてみたが、なかなか上手くできないという声も聞きます。
「どのように進めるのか」と「ポイントは何か」を理解し、取り組むことで大きく効果が出すことができます。
ブランド価値を再確認する
PEST分析を始める準備として自社の「ブランド価値」を再確認しましょう。
理由は以下の2点です。
- ブランドの根幹を揺るがしかねない「世の中の変化」を見抜くため
- 潜在的な「世の中の変化」を見抜くため
ブランド価値に影響を与える変化を見抜く
ブランド価値とは、顧客へ何が提供できるのかということで、言い換えれば「自社の強み」です。
自社の強みであるブランド価値に影響を与える変化は、自社の根幹を揺るがしかねません。
つまり、いち早くブランド価値に影響を与える変化をつかむことで、時代に合ったビジネスが展開可能となり、自社にとってのチャンスや生き残りにつながります。
潜在的な変化を見抜く
ブランド価値を認識することで、気付きにくい潜在的な変化を見抜けるようになります。
タクシー会社の競合は、同じ業界のタクシー会社を想定すると思います。
ブランド価値が「交通手段が無い地域を補う」だった場合、影響を与えるのは競合のタクシー会社だけではなくなります。
バスや電車の路線増加などがあった場合は、潜在的な変化となりえます。
このように、ブランド価値を認識することで、競合の動向だけではない脅威を把握することが可能となります。
4つの項目で分類する
自社に関係しそうな情報を集め、箇条書きで集約し、集約された情報を、【P】、【E】、【S】、【T】の各項目に分類します。
情報は至る所にあり、収集しだすとキリがありません。
新聞、ニュース、業界紙など情報収集の範囲を絞ることをオススメします。
また分類に迷うこともありますが、目的は正確に分類することではなく、影響を与える重要な要因に漏れがないことです。
機会と脅威に分類する
マーケティングとは、顧客のニーズをつかみ、競合より優位に活動をおこなっていくことです。
環境の変化は「脅威」であり、「機会(チャンス)」でもあります。
ブランド価値を考慮し、変化が自社にとって「機会」なのか?それとも「脅威」となってしまうのかを検討しましょう。
脅威を機会に変化できないか検討する
「脅威」に分類したものが「機会」になりえないか、あるいはその逆となってしまわないかについても検討が必要です。
例えば、店頭販売型の保険会社にとっては「ネット型保険の登場」は脅威です。
しかし「人に相談して決めたい」層が求めるのは安心と楽です。
よくわからないからオススメしてもらった保険に加入する方も多いのではないでしょうか?
実際、ネット型保険を扱っている会社より、店頭販売型の保険会社が売り上げを伸ばしているデータも存在します。
ネットでの契約は便利ですが、あえて店舗にこだわることは「機会」と言えます。
PESTの変化は視点や解釈によって「機会」にも「脅威」になりえます。
そのため「機会」と「脅威」に分類するだけではなく、「脅威」を「機会」に変化できないか検討することは重要です。
可能性の高さを検討する
ビジネスでは、将来的にどのようなことが起こるかを予想することも必要です。
完璧な予想はできませんが、「将来起こりうる変化」の可能性の高さについて検討することはできるはずです。
検討については、2つの視点から進めていきます。
証拠の多さで検討する
例として「様々なサービスのインターネット化」が、タクシー会社にとって脅威となるかで検討してみます。
- 【P】:Politics(政治的環境要因) ⇒政府が在宅勤務の導入を推進
- 【E】:Economic(経済的環境要因) ⇒働き方改革による出張削減
- 【S】:Social(社会的環境要因) ⇒コロナウイルスによるリモートワークの推奨
- 【T】:Technological(技術的環境要因) ⇒各企業によるオンライン会議システム開発
PESTのすべての要因が「様々なサービスのインターネット化」を指し示していることがわかります。
複数のPEST要因が、同じ方向の変化を指し示している場合、将来「PESTの変化」が起こる可能性は高くなると考えられます。
人間本来の性質で検討する
人は人間本来の性質へと変化をしていくものです。
その変化とは、以下になります。
- 顧客がより得をする変化
- 顧客がより便利になる変化
- 顧客がより理解しやすくなる変化
- 顧客がより幸福になる変化
これらを複数満たす場合、その変化が起こる可能性は高くなると考えられます。
短期と中長期構造変化で分類する
変化が起こる時期は異なるため、取り組むべき時期も内容により異なります。
一時的な短期と中長期の構造的変化があり、見極めることで成功の可能性を高めることができます。
ポイントとしては、以下のように分類します。
- 短期:一時的であり中長期では変化が無いもの。
- 中長期:一時的ではなく中長期の構造変化となるもの
中長期は、3~5年後で検討するとよいでしょう。
また、チームで議論する場合、話が噛み合うように時間軸の定義は、はじめに合わせておくことをオススメします。
PEST分析の成功例
「Google」、「楽天」、「Facebook」。
急成長したこれらの企業は、PEST分析により「マクロ環境トレンドにうまくのった」効果が大きいと言えるでしょう。
PEST分析で表すと以下になります。
- スマートフォンの普及
- インターネットの普及
- インターネットの低価格化
PEST分析の失敗例
PEST分析によりマクロ環境トレンドにのれないと、大企業でも破綻の可能性があります。
写真フィルムメーカー「コダック」は経営破綻しました。
コダックは、【T】:Technological(技術的環境要因)の変化「写真のデジタル化」という変化に対応できませんでした。
PEST分析で表すと以下になります。
- スマートフォンの普及・携帯で写真を撮る文化の普及
- カメラ部品の小型化
- 低価格化
他のフレームワークも活用する
PEST分析で、マクロ環境を整理し影響度の評価ができました。
この分析結果を活かすには、関連する他のフレームワークも利用すると効果がより上がります。
例えば「3C分析」では・市場環境・自社環境・競合環境といったミクロ環境について分析を進めます。
「SWOT分析」では、組織を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの軸について分析を進めます。
2つの分析では、マクロ的な要因に左右されることも多いため、PEST分析で得た分析結果を落とし込むことが可能です。
まとめ
- 新事業立ち上げや、新しいサービスのリリースなどのタイミングでは、外部環境についての市場調査が必要。
- 外部環境の分析には、ビジネスフレームワークである「PEST分析」が有効。
- PEST分析は【P】:Politics(政治的環境要因)、【E】:Economic(経済的環境要因)、【S】:Social(社会的環境要因)、【T】:Technological(技術的環境要因)で構成される。
- PEST分析の準備として、「ブランド価値=自社の強み」を明確にしておく。
- PEST分析を「どのように進めるのか」と「ポイントは何か」を理解して進める。
- 他の「ビジネスフレームワーク」も活用することで、分析の効果を上げる。
記事を読んで、サービス立ち上げなどに、PEST分析が有効であることが理解できたと思います。
分析もフレームワークを活用すれば進められそうですね!
最初はむずかしいかもしれません。
ですが慣れてしまえば型に沿って進めるだけです。
フレームワーク分析は奥が深いので、いくつか参考になるオススメの書籍も紹介します。
ではPEST分析を活用しチャンスを獲得しましょう!
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